今更ですが、今年も、題詠が始まりましたね。
参加してみたいと思うのですが、最近やや歌を詠む量が少なめだったので、
リハビリとして、不参加だった題詠blog2010のお題に挑戦してみました。
100首で約4時間。全体的に即詠だったので、発想出たとこ勝負なところがありましたが、いい経験になりました。
誤字とか題の詠み込みミスとかあるかもしれません。
今年の題詠は、もう少しきちんと推敲したいと思います。
でもやっぱり、即詠って楽しい。
001:春
春霞陽射しに溶けて降る花のつぶ一粒を手のひらに受く
002:暇
昨日そばにありし人びと今はあらず暇なき午後の春の川端
003:公園
山遠く大き鞦韆日を受けていつくし子らの声揺るる公園
004:疑
疑ひを潜めしころの君が名はやや低音に発音せしか
005:乗
馬の牽く大き車に乗らんとてはるかなる原に出でにける吾
006:サイン
髪長き乙女の爪をうすらかに染めたる青き嫉妬のサイン
007:決
決戦に臨む人らは指を見て目を閉ぢそして顔を上げけり
008:南北
走るにはやや長き橋南北にわたせる川の水おそろしき
009:菜
書架に積む菜根譚の小口すすけ新しき朝迎ふるわれら
010:かけら
携帯の着信ランプひとかけら散らせし人の黒き眼を思ふ
011:青
青みゆく空いや高く雲しろし千々にくだけし硝子に映る
012:穏
木々の根の穏やかに地を割るごとくエレベーターは下降しゆきぬ
013:元気
友きみは元気かと問ふ文ありてそに添ふ小さき画のいつくしき
014:接
音に泣きし昨夜に接ぐ朝眼の赤き子をいつくしむ若き父親
015:ガール
雲ちぎれ海の砕くる朝なれどエレベーターガール上昇下降
016:館
足音なき図書館 推理小説家の描きし館の美を思ふ昼
017:最近
数学の点を競ひし友がきの最近知りし今は亡きこと
018:京
京にあらば散る花あやに高瀬川に浮きわたるらむ恋ほしも京都
019:押
やはらかき桃指もて押しやれば水風船のごと転がりぬ
020:まぐれ
まぐれとは言ひたる人の目に浮かぶ涙の真下にぞ落つ
021:狐
遊歩道に足跡付けて背なに陽を受けて輝く町棲み狐
022:カレンダー
夢はるか去年破りしカレンダーに赤きしるしの紅顔の君
023:魂
たまきはる魂地上4m街灯として立ち並びけり
024:相撲
去年より年たけし子と相撲すれば土いたき冬になりにけるかも
025:環
土星環をかづきて君は天使ならむ痒き背中は羽の跡ならむ
026:丸
ぬばたまの鴉大きく丸を描き飛びき送電線のフレーム
027:そわそわ
などて君そはそは歩く カーテンを透かして赤く入日部屋に満つ
028:陰
夏の虫木陰に入りて靴底に湿りたる土付く昼下がり
029:利用
ご利用のATMの音声の情けなき世を過ぐす母子ら
030:秤
朝の陽を受けたる路に散る花を秤に乗せて春を知りたし
031:SF
SFの遠き星間行く人も逢坂の関越ゆるあたはず
032:苦
わが汗は流れ落つるを止めたらしスポーツドリンク苦き老いの日
033:みかん
夏みかんなづる人さし指細くテーブルに影ほのぼの落とす
034:孫
子も孫も何にかあらむ指ほども思ひのままに動かざんなり
035:金
錆の浮く金属の箱取り出せばトランプひとつからりと鳴りぬ
036:正義
紙に書く文字列我手より離れ知らぬ文字となる正義改変
037:奥
握りゐし手の奥に花 春ひさぐ女の髪のあはれ黒髪
038:空耳
空耳かピーター・フランプトンの曲ワンフレーズを確かに聴きし
039:怠
山にありては山の言霊かけまくも穢るなきをぞ怠るなゆめ
040:レンズ
凸レンズ指もて撫づるだに厚し引き出しの中輝きてあれ
041:鉛
2Bのトンボ鉛筆ころころと転がりて画家瞑目を止む
042:学者
言語学的意志にて学者口を噤む瞬間永久に言霊の葬
043:剥
洋梨の皮剥くナイフ見つめしを薄きつめたき冬のキッチン
044:ペット
マーブルの玄関先に爪立ててペット炎に眼を耀かす
045:群
山群れて雲ちぎれたる東の鋭き陽を受くる今ぞ暁
046:じゃんけん
さびしさは天上の星きらぼしの降り散るごとし子らとじゃんけん
047:蒸
わたつみの蒸発したる海水の天と深海貫く一矢
048:来世
来世あらば我が眼球を取りおきてにらみて見ばや誰か映ると
049:袋
ビニールの袋破りき音のなく破るることを確かめんとて
050:虹
虹のさす遠山際にうすうすと煙立ちたり時雨たるのち
051:番号
時過ぎていつしか君は引越しぬ郵便番号見知らぬ町へ
052:婆
皺の手を擦りて老婆座りをりスーパーマーケットの前を過ぐ
053:ぽかん
少女らはぽかんと口を開けたまま音なく花の散る夢を見る
054:戯
オセロウの死を擬くとき三年の月日は去りぬ戯ごととして
055:アメリカ
葉ひとひら散りぬ荒野を行く人は裸足のままのあはれアメリカ
056:枯
ひと知れず枯れゆく沼の水ぎはの木々のひとつとして人は死ぬ
057:台所
椅子鳴らし食器の前に座りたり台所には割れし平皿
058:脳
脳刺す金串なりや引き出しの奥に置かるるにぶき銀色
059:病
春すぎて病の床に夏の陽のあかあかと差す今は何時か
060:漫画
積む雪の踏まれて黒くなりたるに漫画のキャラの足跡さがす
061:奴
高天吹く疾風に震ふ奴凧へこみ傾き笑ひかき落つ
062:ネクタイ
ネクタイの縞の交錯恋人が恋人の首絞め上ぐる朝
063:仏
二週間経たば仏滅恋人が手と手つなぎて歩く仏滅
064:ふたご
ふたごらの読む本二冊違いたり 兄のみ笑い声を含ます
065:骨
花咲きて雨しぶく夏ま白なる小庭に埋む犬の骨あり
066:雛
雛鳥の軽きうぶ毛のやはらかくほとりと梅雨の残り雨ふる
067:匿名
書きなれぬ文字にやあらむ匿名の匿の字ひとつ大きかりけり
068:怒
怒りもて畳を殴る大名の拳の歴史 司馬遼太郎
069:島
西に雨降り東は晴れたる小島ありわが古里は瀬戸内の島
070:白衣
袖すすけ汚点の花咲く白衣着て学士なでしこ含羞みてあり
071:褪
スカーフの濃山吹色褪せたれば色いや優る君がかんばせ
072:コップ
コカコーラコップに注ぎ散る泡をにらむ八月別れの季節
073:弁
我は野に本を棄ちたり今ははや桜と紙とえ弁へず
074:あとがき
あとがきに遠き花火のおもひでを書きし本あり図書館にて読む
075:微
母の目に光走るを見きそれは微かに泣きてのちの眼の揺れ
076:スーパー
スーパーに並ぶ豚肉赤かりきそを食ふ人の肉や何色
077:対
人と桜対ふ三月風つよく散る花片の雪のごとしも
078:指紋
夏の日の暮れ残りたる部屋にゐて君の小さき指紋を舐むる
079:第
君の指かすかに曲がり唇の形となりき及第の夏
080:夜
暑き夜更けゆきながら舗装路は熱を喪ふ及第の夏
081:シェフ
鴨の乗る大皿を持つシェフの手のやさしき心抱きて文読む
082:弾
がらす玉弾く遊びをせんとして午前三時にさぐる抽斗
083:孤独
送信のされざるままに措かれたるメール捨つまじ孤独を数ふ
084:千
千々にちるワイングラスの水しぶき眺めて男一人立ちたり
085:訛
飲みこみし訛 鏡の前に来て口の動きで反芻しをり
086:水たまり
遠浅の海とも呼ばむ砂利道に長なが続く水たまりあり
087:麗
麗らかに差せる木漏れ日そろそろと足下に来ていづれ消え行く
088:マニキュア
むすめ十八白き歯を見せ笑ひけり赤きマニキュア頬に当てつつ
089:泡
椿水面にひつそりと落つひとつぶの泡の割れたる音を残して
090:恐怖
見上ぐれば落つる空より一片の禽の羽舞ひ来たる恐怖
091:旅
バス停の背中に生ふる葉を摘みて旅の栞の一片となす
092:烈
烈しきは浅瀬打つ波戸棚より降る陶磁器の欠片のかけら
093:全部
マンションの君の階まで階段の全部の段に振り撒こう花
094:底
隠り沼の底ひに沈む硬貨錆ぶ 愛はお金で買えぬものなり
095:黒
黒まさる障子戸の影香れるは夜物語の花散らば花
096:交差
交差路に鳥や鳴くなる人の群れ今一斉に歩き出したり
097:換
七月の人待つ夕のカフェにゐて換気扇の回転を追ふ
098:腕
思はずに我が子の腕を捉へたり指に非情の力込めつつ
099:イコール
賽の目の大き小さきイコールになべてか弱き神の宿れる
100:福
梅散る春桜咲く春のどやかに霞み立ちたる福ひの空
参加してみたいと思うのですが、最近やや歌を詠む量が少なめだったので、
リハビリとして、不参加だった題詠blog2010のお題に挑戦してみました。
100首で約4時間。全体的に即詠だったので、発想出たとこ勝負なところがありましたが、いい経験になりました。
誤字とか題の詠み込みミスとかあるかもしれません。
今年の題詠は、もう少しきちんと推敲したいと思います。
でもやっぱり、即詠って楽しい。
001:春
春霞陽射しに溶けて降る花のつぶ一粒を手のひらに受く
002:暇
昨日そばにありし人びと今はあらず暇なき午後の春の川端
003:公園
山遠く大き鞦韆日を受けていつくし子らの声揺るる公園
004:疑
疑ひを潜めしころの君が名はやや低音に発音せしか
005:乗
馬の牽く大き車に乗らんとてはるかなる原に出でにける吾
006:サイン
髪長き乙女の爪をうすらかに染めたる青き嫉妬のサイン
007:決
決戦に臨む人らは指を見て目を閉ぢそして顔を上げけり
008:南北
走るにはやや長き橋南北にわたせる川の水おそろしき
009:菜
書架に積む菜根譚の小口すすけ新しき朝迎ふるわれら
010:かけら
携帯の着信ランプひとかけら散らせし人の黒き眼を思ふ
011:青
青みゆく空いや高く雲しろし千々にくだけし硝子に映る
012:穏
木々の根の穏やかに地を割るごとくエレベーターは下降しゆきぬ
013:元気
友きみは元気かと問ふ文ありてそに添ふ小さき画のいつくしき
014:接
音に泣きし昨夜に接ぐ朝眼の赤き子をいつくしむ若き父親
015:ガール
雲ちぎれ海の砕くる朝なれどエレベーターガール上昇下降
016:館
足音なき図書館 推理小説家の描きし館の美を思ふ昼
017:最近
数学の点を競ひし友がきの最近知りし今は亡きこと
018:京
京にあらば散る花あやに高瀬川に浮きわたるらむ恋ほしも京都
019:押
やはらかき桃指もて押しやれば水風船のごと転がりぬ
020:まぐれ
まぐれとは言ひたる人の目に浮かぶ涙の真下にぞ落つ
021:狐
遊歩道に足跡付けて背なに陽を受けて輝く町棲み狐
022:カレンダー
夢はるか去年破りしカレンダーに赤きしるしの紅顔の君
023:魂
たまきはる魂地上4m街灯として立ち並びけり
024:相撲
去年より年たけし子と相撲すれば土いたき冬になりにけるかも
025:環
土星環をかづきて君は天使ならむ痒き背中は羽の跡ならむ
026:丸
ぬばたまの鴉大きく丸を描き飛びき送電線のフレーム
027:そわそわ
などて君そはそは歩く カーテンを透かして赤く入日部屋に満つ
028:陰
夏の虫木陰に入りて靴底に湿りたる土付く昼下がり
029:利用
ご利用のATMの音声の情けなき世を過ぐす母子ら
030:秤
朝の陽を受けたる路に散る花を秤に乗せて春を知りたし
031:SF
SFの遠き星間行く人も逢坂の関越ゆるあたはず
032:苦
わが汗は流れ落つるを止めたらしスポーツドリンク苦き老いの日
033:みかん
夏みかんなづる人さし指細くテーブルに影ほのぼの落とす
034:孫
子も孫も何にかあらむ指ほども思ひのままに動かざんなり
035:金
錆の浮く金属の箱取り出せばトランプひとつからりと鳴りぬ
036:正義
紙に書く文字列我手より離れ知らぬ文字となる正義改変
037:奥
握りゐし手の奥に花 春ひさぐ女の髪のあはれ黒髪
038:空耳
空耳かピーター・フランプトンの曲ワンフレーズを確かに聴きし
039:怠
山にありては山の言霊かけまくも穢るなきをぞ怠るなゆめ
040:レンズ
凸レンズ指もて撫づるだに厚し引き出しの中輝きてあれ
041:鉛
2Bのトンボ鉛筆ころころと転がりて画家瞑目を止む
042:学者
言語学的意志にて学者口を噤む瞬間永久に言霊の葬
043:剥
洋梨の皮剥くナイフ見つめしを薄きつめたき冬のキッチン
044:ペット
マーブルの玄関先に爪立ててペット炎に眼を耀かす
045:群
山群れて雲ちぎれたる東の鋭き陽を受くる今ぞ暁
046:じゃんけん
さびしさは天上の星きらぼしの降り散るごとし子らとじゃんけん
047:蒸
わたつみの蒸発したる海水の天と深海貫く一矢
048:来世
来世あらば我が眼球を取りおきてにらみて見ばや誰か映ると
049:袋
ビニールの袋破りき音のなく破るることを確かめんとて
050:虹
虹のさす遠山際にうすうすと煙立ちたり時雨たるのち
051:番号
時過ぎていつしか君は引越しぬ郵便番号見知らぬ町へ
052:婆
皺の手を擦りて老婆座りをりスーパーマーケットの前を過ぐ
053:ぽかん
少女らはぽかんと口を開けたまま音なく花の散る夢を見る
054:戯
オセロウの死を擬くとき三年の月日は去りぬ戯ごととして
055:アメリカ
葉ひとひら散りぬ荒野を行く人は裸足のままのあはれアメリカ
056:枯
ひと知れず枯れゆく沼の水ぎはの木々のひとつとして人は死ぬ
057:台所
椅子鳴らし食器の前に座りたり台所には割れし平皿
058:脳
脳刺す金串なりや引き出しの奥に置かるるにぶき銀色
059:病
春すぎて病の床に夏の陽のあかあかと差す今は何時か
060:漫画
積む雪の踏まれて黒くなりたるに漫画のキャラの足跡さがす
061:奴
高天吹く疾風に震ふ奴凧へこみ傾き笑ひかき落つ
062:ネクタイ
ネクタイの縞の交錯恋人が恋人の首絞め上ぐる朝
063:仏
二週間経たば仏滅恋人が手と手つなぎて歩く仏滅
064:ふたご
ふたごらの読む本二冊違いたり 兄のみ笑い声を含ます
065:骨
花咲きて雨しぶく夏ま白なる小庭に埋む犬の骨あり
066:雛
雛鳥の軽きうぶ毛のやはらかくほとりと梅雨の残り雨ふる
067:匿名
書きなれぬ文字にやあらむ匿名の匿の字ひとつ大きかりけり
068:怒
怒りもて畳を殴る大名の拳の歴史 司馬遼太郎
069:島
西に雨降り東は晴れたる小島ありわが古里は瀬戸内の島
070:白衣
袖すすけ汚点の花咲く白衣着て学士なでしこ含羞みてあり
071:褪
スカーフの濃山吹色褪せたれば色いや優る君がかんばせ
072:コップ
コカコーラコップに注ぎ散る泡をにらむ八月別れの季節
073:弁
我は野に本を棄ちたり今ははや桜と紙とえ弁へず
074:あとがき
あとがきに遠き花火のおもひでを書きし本あり図書館にて読む
075:微
母の目に光走るを見きそれは微かに泣きてのちの眼の揺れ
076:スーパー
スーパーに並ぶ豚肉赤かりきそを食ふ人の肉や何色
077:対
人と桜対ふ三月風つよく散る花片の雪のごとしも
078:指紋
夏の日の暮れ残りたる部屋にゐて君の小さき指紋を舐むる
079:第
君の指かすかに曲がり唇の形となりき及第の夏
080:夜
暑き夜更けゆきながら舗装路は熱を喪ふ及第の夏
081:シェフ
鴨の乗る大皿を持つシェフの手のやさしき心抱きて文読む
082:弾
がらす玉弾く遊びをせんとして午前三時にさぐる抽斗
083:孤独
送信のされざるままに措かれたるメール捨つまじ孤独を数ふ
084:千
千々にちるワイングラスの水しぶき眺めて男一人立ちたり
085:訛
飲みこみし訛 鏡の前に来て口の動きで反芻しをり
086:水たまり
遠浅の海とも呼ばむ砂利道に長なが続く水たまりあり
087:麗
麗らかに差せる木漏れ日そろそろと足下に来ていづれ消え行く
088:マニキュア
むすめ十八白き歯を見せ笑ひけり赤きマニキュア頬に当てつつ
089:泡
椿水面にひつそりと落つひとつぶの泡の割れたる音を残して
090:恐怖
見上ぐれば落つる空より一片の禽の羽舞ひ来たる恐怖
091:旅
バス停の背中に生ふる葉を摘みて旅の栞の一片となす
092:烈
烈しきは浅瀬打つ波戸棚より降る陶磁器の欠片のかけら
093:全部
マンションの君の階まで階段の全部の段に振り撒こう花
094:底
隠り沼の底ひに沈む硬貨錆ぶ 愛はお金で買えぬものなり
095:黒
黒まさる障子戸の影香れるは夜物語の花散らば花
096:交差
交差路に鳥や鳴くなる人の群れ今一斉に歩き出したり
097:換
七月の人待つ夕のカフェにゐて換気扇の回転を追ふ
098:腕
思はずに我が子の腕を捉へたり指に非情の力込めつつ
099:イコール
賽の目の大き小さきイコールになべてか弱き神の宿れる
100:福
梅散る春桜咲く春のどやかに霞み立ちたる福ひの空
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テーマ : 詩・和歌(短歌・俳句・川柳)など
ジャンル : 学問・文化・芸術