九歳の夏の記憶は海風に翻弄される算数ノート
096:翻 (三沢左右)
095:運命 (三沢左右)
恋はるか花の無情を紐解かば運命の遊具軋みつつ巡る
094:雇 (三沢左右)
セーターの袖口を縫ふ妖精を雇はんと思ひて心を清む
093:印 (三沢左右)
珈琲を飲みし印は真っ白きカップに残る真黒きリング
092:勝手 (三沢左右)
身勝手な文字赤あかと散らばったホワイトボードを裏向けて出る
091:覧 (三沢左右)
受賞作一覧の一齣となる小さきフォント 旅のいやはて
090:布 (三沢左右)
鼻の奥ほつれて絡む目薬を布に染ませるみたいにほぐす
089:煽 (三沢左右)
春風はコルクボードのメモ用紙を煽り煽りつ 大き蛾のごと
088:七 (三沢左右)
窓辺に立ちて給水塔を見やるとき七人ミサキの立ち止まる音
087:故意 (三沢左右)
裏庭に割れ硝子しづもりてあり そが憎らしく故意に砕きつ